ある日、人間を超えたいと思った。
食事、睡眠…人間としての当たり前の営みから
脱却することで、それが実現できると考えた。
受験生の頃は、「寝なくてすむ体」が欲しいと思った。
人間は人生の1/3を睡眠にあてているという。
それが無くなれば、どれだけの時間が生まれ、
人生を有意義に過ごせるだろうか。
私は、勉強そっちのけで睡眠や短眠に関する本を読みあさった。
ある偉い人が書いた本に、短眠で済む体を作るための
数ヶ月にわたるプログラムが記されてあった。
1日目から徐々に睡眠時間を減らし、
徹夜を数日繰り返し、また睡眠時間を少しずつ増やし…
読むだけできつくなってくる。
実際に著者はその方法で短時間の睡眠を実現したらしい。
その時の苦しみが書き記されていた。
「それは想像を絶する苦痛だった。大学時代、昼間の講義中に寝そうになる自分の手の甲に針を刺し、眠気に耐えた。歩きながら、電柱にぶつかることもしょっちゅう。車にひかれそうになったこともあった。危ないからと友人に手を引かれ、何とか自宅に帰る日々。私はそんな素晴らしい友人たちの支えによって、今こうして短眠の体を…」
私はそっと本を閉じた。
やめだやめだー!
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それから十年以上経った今年の10月、
今度は「食べる」という行為から解放されようと思った。
何でも、1日1食で生きている人がざらにいるらしい。
食べないことで胃の負担を減るから、睡眠時間が少なくて済む。
食べないことによって適度な飢餓感が生まれ、集中力が研ぎ澄まされる。
勝手にそんなことを考え、1ヶ月にわたるプチ断食がスタートした。
【私の断食ルール】・日が沈んだら多少は食べても良い。さすがに食べないと死ぬから。
・飲み物や酒は自由。煙草もOK。
・飴もガムもOK
・バーベキューとか飲み会などのイベントでは好きなだけ食べてOK。
若干ゆるいように感じるかもしれないが、目的は節約でもダイエットでもないため、
一旦このルールでスタートする。
元々朝は食べない主義なので、後は昼を1食抜けば良いだけ。
その時は、そこまで難しくはないと思っていた…。
断食を開始する前日。最後の晩餐は、ラーメン二郎。
「ニンニク、ヤサイ、アブラ、カラメで!」
あえて「全部で」とは言わない。
ちょっと前置きが長くなりすぎて面倒になってきたので、
結局断食がどうだったのかを簡単に。
・つらい。相当つらい。頭が冴え渡るどころか、ぼーっとした状態が続く。
・フラフラして、手すりを使わないと階段を降りられなくなる。
・夜も軽めにしか食べないので、絶えず腹が減った状態。隣の席の人がカレーとか食べ始めると地獄。
・テレビとかも敵。朝何気なくテレビをつけていたら、急に料理はじめてオリーブオイルとか大量にかけてる人いるし。
ずっと不思議だったことがあった。
昔のゲームでは、アイテムを取ると体力ゲージが回復するようになる。
そのアイテムは、おにぎりとかケーキとか、だいたい食べ物だ。
「何でそば食って体力回復するんだよ(笑)」
断食を経験した私に言わせれば、確実に体力は回復する。
あのゲームは、「食べ物が無い苦しみ」をわかっている世代が作ったものだろう。
私は苦しい1ヶ月を終え、今では朝昼を抜いても平気な体を手に入れることができた。
1日1食で生きていける体を手に入れることができた。
だから、私がこれから昼食を食べるとしたら、
それは「空腹を満たすための食事」ではなく、あくまで「趣味」だ。
断食当時、私の周囲は、繁忙期でみんな忙しそうだった。
だが忘れないでほしい。
その時、同時に「空腹」とも戦っていた1人の戦士がいたということを。
画像参照:
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